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     高齢者を支える親族のための法律知識
       
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平成24年8月1日
                                    弁護士  亀井 美智子

【Q2】 老齢の親に対する子の扶養義務
   息子の生活に余裕があるのに、母親に生活保護を受けさせたことを非難するマス コ ミ報道を聞きましたが、法律上、独立した子は親を扶養する義務がありますか。子の扶 養義務とは具体的には何をする義務ですか?子の生活もぎりぎりのときはどうなるのでしょうか?

 

【A2】
  子の親に対し、自分の社会的地位、収入等相応の生活をした上で余力がある場合に 限り、必要最低限の生活費を分担すれば足ります(生活扶助義務といいます)。

 

【解説】

1 扶養とは

  扶養とは、自分の力だけでは生活できない人に経済的援助をすることです。

扶養義務者は、配偶者、直系血族、兄弟姉妹です(民法760条、877条1項)。ただ し、特別の事情があれば家裁はこれ以外の3親等内の親族にも義務をわせることがで きます(民法877条2項)

 

  そして、扶養義務には、二種類あります。

  「生活保持義務」と「生活扶助義務」です。

「生活保持義務」というのは、自分の収入、資産を使って被扶養者に自分と同程度の 生活を保持させる義務です。例としては、夫婦間、親と未成熟子間の扶養があります。

それに対し、「生活扶助義務」というのは、扶養義務者が自分の職業や社会的地位にふさわしい生活をしたうえでなお余裕がある場合だけ、被扶養者の必要最小限の生活を保障する義務です。成熟した子が親に対して負う扶養義務がこれです。

したがって、成熟した子は上記のとおり生活に余裕がある範囲で親に対して扶養義務を負いますが、子の生活もぎりぎりのときは、扶養義務は負いません。

 

2 扶養義務の方法・程度

誰がどのような方法でどの程度扶養するかについては、当事者の協議で決めるのが原則ですが、話し合いで合意できないときは、家庭裁判所に調停の申立をし、調停が成立しないときは、家庭裁判所が、審判で義務者に一定の扶養を命ずることになります(民法879条、家事審判法17条、26項)。

 

  裁判所が命ずる扶養の方法には、引取扶養と金銭扶養があります。

  引取扶養は、同居することになる家族との人間関係がありますから、実際には親子とも同意した時にしか、命ずることはできないと思われます。

  金銭扶養の場合、親が必要とする生活費を計算して扶養料の額を決め、それを子の扶養能力に応じて割り振ることになります。

 

扶養料には、衣食住の経費のほか、医療費、教育費、最小限度の文化費、娯楽費、交際費などが含まれます。算出方法は、生活保護基準、総務省統計局や各都道府県の標準世帯の生活費、労働科学研究所の算出した標準的消費量などを参考に算出されます。

なお、扶養の方法・程度は、扶養義務者の親族関係や資力のほか、これまでの交際状態、生活困窮の原因、扶養義務者が過去に要扶養者に虐待されたような事情(例えば子を捨てて顧みなかった親)など一切の事情が考慮されて決定されます(民法879条)。

 

3 生活保護との関係  

  生活保護法4条には、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と定められており、生活保護は、私的扶養を補足するものと位置付けられています。

  もっとも、生活保護法は憲法25条の生存権に基づく保障です。ですから、現状として生活できない以上、国は、余力のある親族がいるからといって保護を拒絶することはできません。現実に扶養を受けられない場合は取りあえず保護をし(生活保護法4条3項)、保護の実施機関は、扶養義務者からその費用を徴収することになります(同法77条)。

以上

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