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     高齢者を支える親族のための法律知識
      
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                                          平成24年9月1日
                                       弁護士  亀井 美智子


【Q3】 親の介護と遺産分割
  
私は、認知症になってしまった母親の介護を10年間続けてきました。兄や姉は年に数回母を見舞う程度で、母の介護は私にまかせきりです。万一母が亡くなって、兄姉と遺産分割の話になったとき、私の相続分を多くしてもらうことはできるのでしょうか?

【A3】
  介護により、母親に対して親族間の生活扶助義務の限度を超えて特別の寄与をした場合は、遺産分割の協議に際して、寄与分を主張することができます。

【解説】
1 寄与分とは
  共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務提供または財産上の給付、被相続人の療養看護等で被相続人の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした人がいる場合は、寄与を考慮してその人の相続分を多くしないと不公平です。
  そこで、民法904条の2は、寄与者の相続分は、寄与の分だけ、ほかの相続人よりも多くの遺産を取得できるように定めました。 

2 寄与行為の要件
 「特別の寄与」とは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献をいいます。
 直系血族では互いに扶養する義務がありますし(民法877条)、互いに助け会う義務があります(民法730条)。これらの義務の範囲内の行為は通常の寄与であって、特別の寄与には当たりません。
 したがって、あなたが療養看護による寄与を主張するためには、子の親に対する通常の面倒見扶養の程度を越えたものでなければなりません。
 そして、療養看護によって、たとえば看護人の費用の支出を免れたなど相続財産が維持されたという財産上の効果をもたらしたことが必要です。被相続人を精神的に支え続け、被相続人から感謝されていたとしても、財産に反映されない場合は、特別な寄与にはなりません。なお、相続人自身が療養看護しなくても、第三者に療養看護させて相続人がその費用を負担するという態様も可能です。

 少し具体的な事例を見てみましょう。
 特別の寄与と認めなかったケースは、相続人が、被相続人の食事を作るなど家事の手伝いに遠方から通ったことや、被相続人が入院した期間中は病院に通って差入れをした、などと主張しましたが、裁判所は、被相続人は自立した生活をしていたことなどから、同居の直系親族としての通常期待される扶養義務の範囲を超える療養看護をしたとまでは評価できないとし、特別の寄与には該当しないとしました(広島家裁呉支部 平成22年10月5日)。

 特別の寄与と認めた判例としては、相続人が、身体が不自由になった被相続人に対し、長年にわたって失禁の後始末や、おむつ交換、食事の介添え等を行い、痴呆が進行して入院した後も、病院に通って介護したり、病院に泊まり込んで付き添うなどし、さらに生活費、治療費、介護用品購入費用について被相続人の収入で足りない部分を負担してきたことから、特別の寄与と認めた事例があります(広島高裁岡山支部 平成12年11月29日)。
   
3 寄与者の取得する遺産の計算方法について
 寄与者の取得する遺産は、寄与分の額と、それを除いた相続財産の法定相続分の割合による遺産を加えた額になります。
 寄与分の決め方ですが、まず全相続人の協議で定め、協議が整わないときには家庭裁判所の調停で話し合い、それでも決まらないときは、家庭裁判所が寄与の時期・方法・程度、相続財産の額など一切の事情を考慮して、審判で決定します(民法904条の2、2項)。
  寄与分の額は、一定金額で定める方法と、全遺産における割合で定める方法があります。
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