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     高齢者を支える親族のための法律知識
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                                           平成25年1月1日
                                                  弁護士  亀井 美智子


【Q7】 サ高住とは
       私の父は、一昨年母が亡くなった後、遠方で一人暮らしをしていますが、最近体力が落ちて
     物忘れも激しくなり、食事のことや、今後介護が必要となった場合が心配です。父に相応しい高齢
     者向けの住宅にはどのようなものがありますか?

【A7】
       食事サービスが受けられて、将来介護が必要となった場合にも対応できる高齢者向け住宅
     施設としては、サービス付き高齢者向け住宅(食事サービス付のもの)、軽費老人ホーム(ケア
     ハウス)、介護付有料老人ホームが上げられます。
       そのうち、サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」と言います)は、安否確認、生活相談
     などの見守りサービスの付いたバリアフリー構造の高齢者向け賃貸住宅で、平成23年10月に
     施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(以下「高齢者住まい法」と言います)の改
     正により、新たに創設されました。この住宅の契約に際しては、同法により、権利金の取得禁止
     や、入居一時金の保全措置、解除制限などの消費者保護規定が適用されます。

【解説】
1 サ高住の創設趣旨
  近年、比較的お元気か、要介護度がそれほど高くない高齢者単身、高齢者夫婦世帯が急激に増加し、高齢者向け住宅が大幅に不足しています。それに対し、従来の高齢者向け賃貸住宅(高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅)は、医療・介護事業者との連携や、行政の指導監督が不十分である点が指摘されてきました。
  そこで改正法は、新たに高齢者に相応しいバリアフリーな構造に、高齢者が安心できるサービスを付加した賃貸等の住宅、サ高住を創設しました(上記の高円賃、高専賃は廃止されました)。
  また、改正法では、解約や前払い金を巡る紛争を防止する消費者保護規定が置かれ(高齢者住まい法第7条)、立入検査、是正指示、登録取消など行政の指導監督権限も強化されました(同法第24条以下)。

2 入居条件
  60歳以上であれば、要介護者でも入所できます。

3 入居時の費用、家賃
  入居時の費用としては、敷金、及び一部家賃・サービス費の前払金のみ徴収が可能です。
  家賃は月額約5万円から15万円くらいと言われています。

4 規模・設備
  住まいは、段差がなく、手すりが設置されているなどバリアフリー構造で、原則として、各専用部分につき、床面積は25㎡以上、台所、水洗トイレ、収納設備、洗面設備、浴室を備えています。

5 サービス
  ケアの専門家(看護師、介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパーなど)による安否確認サービス、及び生活相談サービスの二つは義務化されています。
  その他は介護、医療、生活支援などについて、サービスの内容は施設によって様々であり、入居者のニーズにあわせて施設を選べます。

6 消費者保護措置
  サ高住を行おうとする業者は、都道府県知事による登録を受ける必要がありますが、登録申請の際、次の基準に適合する契約であることが要求されます(高齢者住まい法第7条)。
  書面による契約であること、居住部分が明示されていること、権利金などの取得禁止、前払金の算定基礎・返還債務の金額の算定方法明示、入居後3カ月以内の契約解除・死亡の場合の前払金返還、長期入院を理由とする一方的解約禁止、住宅工事完了前の前払金受領禁止、前払金の保全措置を講じていること、などです。
  これらは、従来から有料老人ホームなどでトラブルになっていた問題ばかりですから、消費者としては、ある程度安心して契約をすることができます。ただし、施設によって賃料の金額・支払方法、サービスの内容・金額・支払方法、敷金等前払が必要な費用・金額、賃貸開始・終了時期、専用部分、共同利用の部分とその使用料、付属施設とその使用料、など異なりますから、契約書のチェックは怠らないようにしましょう。

7 相応しいサ高住を選ぶ
  できたら住みなれた環境で、地域社会と交流しながら、ケアを受けつつも、いつまでも自分らしく生き生きと暮らしてほしい、というのが家族の願いでしょう。そのために住まい選びは重要です。サービスやケアの付いた住宅に住み替えるには、将来にわたる本人の身体状況、経済状況をふまえて安心な住まいを選ぶ必要があります。
  サ高住については、都道府県、政令市、中核市の住宅課などの窓口で閲覧できますし、ホームページ(http://www.satsuki-jutaku.jp/)でも全国の登録されたサ高住の施設やサービス内容などを検索できます。
  いくつか候補を絞ったら、本人が同行して見学し、その希望を聞くことはもちろん重要です。しかし、家族としても、質問事項を事前にメモしておいて、実際に何度か施設に足を運んでみて、契約書の内容や介護が必要となった場合について説明を聞き、施設を案内してもらい、居住者の様子や、施設管理者や介護の従業員の様子を観察し、質問してみることも欠かせない作業と思います。
 
                                                  以上

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