学べるコラムQ&A

高齢者を支える親族のための法律知識
【バックナンバー】
平成25年3月1日
弁護士 亀井 美智子
【Q9】 リバースモーゲージとは
私の叔母は70歳近くになりますが、昨年夫が亡くなり、夫が遺した自宅以外、財産はほと
んどありません。叔母は、なるべく長く自宅で暮らしたいと言っていますが、年金だけでは生活
が大変なようです。ところで、高齢者が自宅を担保にお金を借りる方法があると聞きましたが、
叔母の場合どうでしょうか。
【A9】
それは、リバースモーゲージという方法です。自宅を担保にして生活資金を借入れ、死亡
時に自宅を売却して借入金を一括返済することにより清算する方法です。自宅は所有していて
も生活資金が不足している、けれども、自宅に住み続けたいから自宅を売却できない、という高
齢者に向いている制度です。
【解説】
1 民間の金融機関が行っているリバースモーゲージ
住宅担保型老後資金ローンといい、毎年一定額を受取るか、一定の枠内で随時借り入れができ、生活資金だけでなく、自宅のリフォームや、老人ホームへの入居資金としても利用できるものもあります。
一般には、住宅ローンに比べて金利が高く、変動金利です。例えば契約者は、年齢が60歳以上であること、対象不動産は、土地付一戸建て(マンションは不可)で同居人がいないこと(配偶者は可)、評価額が8000万円以上であることなどの契約条件があり、担保不動産の場所を一定の都府県に限定している銀行もあります。
バブル崩壊による不動産価格の下落によって多くのリバースモーゲージが担保割れした苦い経験を踏まえ、契約者、借入限度額、担保不動産などについて、各金融機関により様々な厳しい契約条件が付けられています。
ところで、上記のような民間の銀行・信託銀行が行う従来のリバースモーゲージは、裕福な高齢者が対象ですが、平成14年以降、低所得者や要保護世帯向けに、行政(全国の都道府県社会福祉協議会)が主体となってリバースモーゲージが行われるようになりました。
ここではご相談者のケースの低所得者向け不動産担保型生活資金(旧称「長期生活支援資金」)を取り上げ、その後リバースモーゲージに共通するリスクについて説明したいと思います。
2 不動産担保型生活資金
不動産担保型生活資金は、都道府県社会福祉協議会(窓口は市町村社会福祉協議会です)が、低所得の高齢者向けに行っている、生活資金を貸し付けるリバースモーゲージです。以下に、主な契約条件と借入内容について述べます。
(1) 契約者の条件(原則)
65歳以上であること。
単身又は夫婦のみであること。
住民税の非課税または均等割課税程度の低所得世帯であること。
このほか、連帯保証人や、推定相続人の同意が必要です。これは、契約者の死亡時に、推定相続人が相続できると期待している不動産を、貸付先が売却換金することになることから、相続人とのトラブルを回避するためです。
(2)担保不動産の条件
一戸建て(マンションは認められない)
単独所有。ただし、同居の配偶者と共有で、その配偶者と連帯して借り入れる場合は、認められます。
賃借権等の利用権及び抵当権等の担保権が設定されていないこと。
土地の評価額が原則として1500万円以上であること。
(3)貸付内容
月額30万円以内を3カ月ごとに交付
貸付限度額 土地の評価額の70%
利率 年3%(4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い方)
貸付期間 貸付限度額に達するまで
終了 借り受け人の死亡(ただし、夫婦で居住していた場合は生存配偶者が承継できます)。
3 リバースモーゲージが抱える将来のリスク
リバースモーゲージは、現預金のない高齢者が老後の資金を手にできる便利な制度ですが、備えておかなければならない将来のリスクがいくつかあります。以下は「3大リスク」といわれているものです。
(1)不動産の下落による担保割れのリスク
不動産の時価評価が下落して、借入金債務の額を下回ると、融資が停止されるか、追加担保をしなければならなくなります。
(2)金利上昇による融資打ち止めのリスク
金利上昇により契約終了前に融資残高が不動産評価額を越えてしまうとそれ以上融資が受けられなくなってしまいます。
(3) 長生きによる融資打ち止めのリスク
長生きは結構なことなのですが、生きている間に融資残高が不動産評価額を越えてしまうと、融資が受けられなくなってしまいます。貸付が停止されても、住み続けることはできますが、以降は利息を支払い続ける必要があります。
4 おわりに
前記のとおりリ、リバースモーゲージには様々な契約条件があるほか、将来のリスクも考慮のうえ、余裕を持って、毎月いくら、いつまで借り入れるのか、慎重に計画を立てる必要があります。そこで、不動産担保型生活資金をご希望の方は、ご親族とも十分協議のうえ、まずは、お住まいの区市町村社会福祉協議会にご相談ください。
以上
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