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平成26年3月5日

弁護士 亀井 美智子



【Q13】 成年後見監督人とはどういう人ですか

私は、家庭裁判所に申立を行って、父の成年後見人に選任されましたが、その際、裁判所は成年後見監督人として弁護士の先生を選任し、年に一度、裁判所が決めた報酬を支払う必要があると言われました。成年後見監督人というのは、何をする人で、どうして必要なのでしょうか。父の老後の資金のため、できるだけ支出は控えたいですし、これまでも実際には私が父の財産を管理してきたのであり、特に助けは必要ありません。成年後見監督人を断ることはできないでしょうか。

 

【A13】

 成年後見監督人の選任は、申立人の意向とは無関係に家庭裁判所が行うもので、この選任の審判自体については、不服申立をすることができません。

また、成年後見監督人に不正な行為などがない限りは、解任することもできません(民法852条、846条)。

 

【解説】

1 成年後見監督人とは

 成年後見監督人とは、後見人を監督する機関で、親族などの請求又は職権で家裁が選任することができます(民法849条の2)。成年後見監督人は、後見人を監督する立場であることから、裁判所の運用としては、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職を選任しています。

どういう場合に選任されるかというと、例えば今後、被後見人と後見人との間で遺産分割協議が予定されている場合(課題解決型)、被後見人が多額の預金や賃貸マンションを所有しており、後見人が適切に財産管理を行えるか不安がある場合(助言・指導型)、後見人が自分の生活費と同居している被後見人の生活費を明確に区別しないで管理しているおそれがある場合(不祥事防止型)などです。

 

2 成年後見監督人の仕事

  それでは次に、成年後見監督人は、どういう仕事をするのか、見てみまし

 ょう。

 

 (1) 後見事務の監督(民法851条1号)

   成年後見監督人は、主として次のような方法により後見人を監督します。

① 後見人の就任時に作成する財産調査、財産目録を点検すること。

成年後見監督人がついている場合は、成年後見監督人のチェックを受けない限り、財産調査、財産目録の作成は効力がありません(民法853条2項)。

  ② 後見人に後見事務報告、財産目録の提出を求めたり、後見事務、被後見人の財産状況を調査すること(民法863条1項)。

成年後見監督人は、後見人から提出された後見事務報告書、財産目録を審査し、家裁に後見監督事務報告書を提出します。

③ 後見人が被後見人に対して債権債務があるときは、その申し出を受けること(民法855条)。

④ 重要な財産行為についての後見人の代理行使に同意を与えること(民法864条)。

たとえば被後見人が所有する賃貸マンションを売却する場合は、成年後見監督人の同意を得る必要があります。

⑤ 後見の計算(後見人の任務終了時の管理の計算)を点検すること(民法871条)。

(2) 後見人と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること(民法851条4号)。

たとえば後見人と遺産分割の協議を行うときは、成年後見監督人が被後見人を代理します。

(3) 後見人が欠けた場合に、新たな後見人の選任を家裁に請求すること(民法851条2号)。

(4) 急迫の事情がある場合に後見人に代わって必要な処分をすること(民法851条3号)。

  例としては、被後見人の債権につき消滅時効が成立しそうなときに行う時効の中断、倒壊しそうな家屋の修繕、などです。

 

3 成年後見監督人との関係

成年後見監督人は後見人を監督する立場であって、成年後見監督人に、後見人に代わって後見人の仕事をしてもらったり、後見人の仕事を手伝ってもらったりするわけにはいきません。

また、後見人が成年後見監督人に専門職の業務を委任することもできません。後見人が成年後見監督人の顧客になるのでは、成年後見監督人に十分な指導、監督を期待できなくなるおそれがあるためです。たとえば、後見人が成年後見監督人である弁護士に、被後見人の訴訟代理人となるよう依頼することはできません。

 

しかしながら、後見人の後見事務について指導・助言を行うことは、先ほど述べように、後見監督の重要な職務の一つですから、後見人の仕事を行うに際して、どうすればよいか迷うときには、成年後見監督人に連絡を取り、その指導を仰げばよいのです。例えば弁護士が成年後見監督人のときは、後見人は、成年後見事務に関して常に法的アドバイスが受けられることになります。という訳で、せっかく裁判所が、専門知識のある信頼できるアドバイザーを付けてくれたのですから、うまく利用して適正で効率のよい後見事務を行えるよう良い関係を築いてください。

以上

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